国際開発協力は、援助する側とされる側、便益を受ける側と費用を負担する側など、立場によって異なる課題に直面し、異なる利害関係や認識をもった多様なステークホルダー達によって織りなされる営みである。よって、国際開発協力の事業を推進するには、自分とは異なる立場の「他者」が直面する制約条件や立場などを理解する力、想像する力が不可欠となる。こうした力は、国際開発協力の分野でキャリア形成をする諸氏のみならず、現代の世界を生きていく上で必要なリテラシーといえるであろう。本講座は、国際開発協力という事象を切り口として、多様な「当事者」の視点に立って縦横無尽に捉えることができる「複眼的な視点」を獲得することを目的とするものである。そのための仕掛けとして本講座は、一方的な講義ではなくワークショップの形式をとり、特定の「現場」において実際に発生している個別のケースを題材として、現場ではどのようなことが起こりうるのか、どこにボトルネックがあるのか、「現場から考える」シミュレーションを行う。すなわち、多様な開発課題を抱えた実在の開発途上国のアクターとしてそれぞれの観点から開発課題に取り組んでもらい、外部のリソースを活用して国としてのソリューションを形成してゆくグループワークを中心に展開される実践的な講座となる。 COVID-19パンデミック以降、国際開発協力のオペレーションにおいても、その協力対象の「現場」に人材が投入できない状況が生まれている。こうした状況のなかで、現場があることのありがたさが再認識されていることも事実であり、こうした状況だからこそ「現場から考える」ことがますます重要な意義をもつといえるであろう。これまでアクセスできていた現場へのアクセスが難しくなったという事実もまた「新しい現実」の一部であり、その意味では、本ワークショップは、ポスト・コロナにおける国際開発協力のあり方を考える契機にもなるであろう。 本年度の舞台となる具体的な途上国の現場は、一昨年度のウガンダ、昨年度のバングラデシュに続き、スリランカを予定している。参加者各位には、スリランカ民主社会主義共和国の中央政府を構成する各省庁の担当者(官僚)として、日本のODAを活用すべくグループで協力しながら援助の要請書(プロポーザル)を作成するというお題にチャレンジしてもらう。作成された要請書は、実際の国際協力機構(JICA)関係部の職員に査定され、評価、講評される。要請書の作成およびプレゼンテーションという最終成果に向けて、10月以降、数次の集中ワークショップ(土曜日の午後に開催)を実施し、グループ内およびグループ間での合意形成を行っていく。その過程で、教員やJICAスタッフ、開発コンサルによる知見や方法論のインプットもなされる。詳細は、授業計画を参照。 なお、本講座は、国際協力銀行(JBIC)および国際協力機構(JICA)において実務経験のある専任教員が、国際開発協力に関する実務経験を生かしつつ、JICAの全面的な支援によって実現する講座である。
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日程については下記のとおり確定していますが、各回のワークショップの内容について若干の変更の可能性はあります。
0: 講座への登録:9月9日〜10月6日 *大学の履修登録締めきりよりも早いのでご注意ください。 *全ての履修希望者は、以下のJICAサイトからの登録が必要になります。 https://www.jica.go.jp/yokohama/topics/2021/210915.html 詳細は、下記の「履修条件および関連科目」の部分に記載。
(講座開始より前に、今後読んでおくべき課題図書の一部が提示されます) 1.集中インプット期間:10月9日〜10月23日 第1回ワークショップ:10月09日(土)13時〜17時: 世界の開発課題と課題解決のツールを知る 第2回ワークショップ:10月16日(土)13時〜17時: 途上国(スリランカ)の現場の課題を知る 第3回ワークショップ:10月23日(土)13時〜17時: 国の開発課題に対応する中央省庁の役割を知る
2.ロールプレイへの準備期間:10月23日〜11月06日 省庁ごとに分けられた各グループにおいて、自らの省や役職上のマンデートや役割などを調べ、役になりきる期間 (10月23日以降第4回ワークショップまでは各省ごとのグループワーク) 第4回ワークショップ:11月06日:13時〜17時: 現場の課題を当事者として体系的に把握し、政策を立案する方法を知る
3.ロールプレイ期間:11月06日〜12月25日 (11月06日以降第5回ワークショップまでは各省ごとのグループワーク) 第5回ワークショップ:11月27日:13時〜17時: 国家開発戦略会議(国としての課題解決の方向性)の意志決定) 第6回ワークショップ:12月04日:13時〜17時: 対外戦略の検討会議(ドナーとしての日本への対応方針の意志決定) (12月04日以降第7回ワークショップまでは各省ごとおよび、対日交渉グループ等の役割ごとのグループワークや交渉準備) 第7回ワークショップ:12月25日:13時〜17時: スリランカ-日本間のパートナーシップ会合(二国間での合意形成)
4.振り返り期間:12月25日〜01月08日 (12月25日以降第8回ワークショップまでは各自がロールプレイの振り返りを行い、ペーパーを作成する) 第8回ワークショップ:01月08日:13時〜17時: 総括: 振り返り、解説、質問、討論
*上記の正規プログラムとは別に、自由参加のスピンオフ講座や企画など開催される見込みです。
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・本講座の参加者は、10月〜1月の土曜日(計8回)に開催される全てのワークショップへの参加が義務づけられる。 ・ワークショップとワークショップの合間の期間は、グループごとに独自の学習や準備を進めていくことが必須となっており、相当な時間を割くことが求められる。毎回のワークショップの前後で必要となる予習復習(事前準備や事後対応)のためには、実際のワークショップに参加している時間と同等程度の時間をかける必要があると考えられる。こうしたコミットができる学生のみの参加が求められる。
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国際開発協力の現場で起こっている事象を、一元的な視点ではなく多角的な視点から捉えることができるようになり、国際開発協力のあり方をめぐって展開されているイシューに対して自ら判断を下すための軸をもつことができるようになる。
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特定の国(本年はスリランカ)の開発課題およびODAの仕組みについて、最低限の知識を獲得する。加えて、国際開発協力の現場で起こっている事象を、(少なくともロールプレイで担当した)特定のセクターの視点から捉えることができるようになる。
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所属グループにおける政策案形成への貢献(60%)、全体会合への貢献(20%)、振り返りのレポート(20%)に基づいて評価する。
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【成績評価の基準表】
秀(S) | 優(A) | 良(B) | 可(C) | 不可(F) |
履修目標を越えたレベルを達成している | 履修目標を達成している | 履修目標と到達目標の間にあるレベルを達成している | 到達目標を達成している | 到達目標を達成できていない |
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履修目標:授業で扱う内容(授業のねらい)を示す目標
到達目標:授業において最低限学生が身につける内容を示す目標
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【授業別ルーブリック】
評価項目 | 評価基準 |
期待している以上である | 十分に満足できる(履修目標) | やや努力を要する | 努力を要する(到達目標) | 相当の努力を要する |
個別学習 | プレゼンの内容が講座全体の進行に決定的な効果を及ぼす | 割り当てられたアサインメントの範囲を超えて質の高いプレゼンをする | 割り当てられたアサインメントに対して質の高いプレゼンをする | 割り当てられたアサインメントをこなす | 割り当てられたアサインメントを怠る |
グループワーク | ワークショップの合意形成に多大な貢献がなされた | ワークショップのプロセスで議論をリードできる | ワークショップのプロセスで積極的な役割を果たせる | ワークショップのプロセスに参画できる | ワークショップのプロセスに参画できていない |
成果物 | 実務で通用しうるレベルの提案がなされる | スリランカのケースを超えたより普遍的な提案がなされる | ワークショップの成果を踏まえた上で、実践的な提案ができる | ワークショップの成果を踏まえた提案ができる | ワークショップの成果と無関係の提案がなされる |
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・本講座は、一方的な講義ではなくワークショップの形式をとる。実在する特定の国をケース国とし、その抱える開発課題に、その国の政府の各省の担当者として、それぞれのセクターの観点から取り組み、外部のリソース(ODA)を活用して国としてのソリューションを考案してゆくという、グループワークを中心としたものとなる。 ・グループワークの実施に際しては、学生やOBのメンターがつき、必要に応じてアドバイスをもらえる。 ・本講座はすべて、オンラインにて実施する。ワークショップおよびグループワークにおけるコミュニケーションのツールとしてはZoom(オーラル)およびSlack(テキスト)、ブレインストーミングのツールとしてはMiro、文書管理のツールとしてはGoogleドライブを用いる。 ・本講座の最終的なアウトカムをつくりあげるためには、同僚や上司、部下といった組織内さらには組織や国を超えて、連携や交渉や調整をしながら業務を遂行する必要がある。こうした技能は実際の開発協力の業務を進めてゆく上で必要であり、本講座は社会人としての仕事の効果的、効率的な進め方を学ぶ機会ともなる。
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9784864294843
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開発援助がつくる社会生活 = Living With Aid : 現場からのプロジェクト診断
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青山和佳, 受田宏之, 小林誉明 編著,初鹿野直美, 東方孝之, 宮地隆廣 著,青山, 和佳,受田, 宏之,小林, 誉明,初鹿野, 直美,東方, 孝之,宮地, 隆廣,
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大学教育出版
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2017
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ここに挙げた教科書は、複眼的な視点をもつことの重要性を提起した、講師らによる編著作である。講座のなかで直接的に使用するわけではないが、本講座で伝えたいエッセンスが詰まっているものなので、一度は手にとってみることをお薦めする。
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ワークショップのなかで必要に応じて、全員が共通で読むべき基本的な文献および関連文献を紹介する。
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履修希望者は、期日(10月6日)までに、下記のJICAの応募サイトより所定の申し込み手続にしたがって参加申し込みを行ってください。提出された応募書類を審査した上で、履修者の選抜を行います。(本学の履修登録システムからは登録できないので注意してください。単位取得を必要としない聴講生の場合も同じ手続が必要です)。
JICA応募サイト: https://www.jica.go.jp/yokohama/topics/2021/210915.html
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ODA, 援助政策, 開発計画, 開発学, JICA, 開発課題, スリランカ、パートナーシップ
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国際開発協力の現場の風にどっぷり浸かる密度の濃い時間を過ごせることを保証します。国際開発協力の世界に初めて足を踏み入れる学生も、すでに知識や経験を積み重ねた上級者のどちらも歓迎します。将来において海外での活躍を考えている諸氏の参加を待っています。本講座に関する問い合わせは、担当教員の小林誉明准教授(t-kobayashi@ynu.ac.jp)まで。
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