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学術論文を執筆するうえで、研究方法論を深く理解することは不可欠です。とりわけ経営学研究では、統計分析を中心とした定量研究法に関する講義は多く存在する一方で、ケース・スタディ(事例研究)などの定性研究法を体系的に学ぶ機会は決して多くありません。しかし実際には、組織や経営現象の複雑なメカニズムを理解するために、ケース・スタディは重要な研究戦略として多くのトップジャーナルで用いられています。
本講義では、グローバルマネジメントの事例や研究論文を題材としながら、ケース・スタディを中心とした定性研究の方法論を体系的に学びます。特に、ケース研究における代表的な三つのアプローチを比較しながら理解を深めていきます。具体的には、Glaser and Straussによる帰納的定性研究法としてのグラウンデッド・セオリー・アプローチ、Yinによる実証的なケース研究デザイン、そしてEisenhardtによるケース研究から理論を構築するアプローチを取り上げ、それぞれの特徴と研究戦略の違いを検討します。
さらに、実際にケース・スタディを用いて執筆されたトップジャーナルの論文を読み解き、研究デザイン、データ収集、理論構築のプロセスを分析します。これにより、学生は単に方法論を理解するだけでなく、ケース研究を通じてどのように理論を構築し、学術論文として発表していくのかを具体的に学びます。
本講義を通じて、学生はケース・スタディ研究の理論的基盤と実践的手法を理解し、将来的に国際的な学術ジャーナルに投稿可能な研究を構想・設計するための基礎を身につけることを目指します。
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第1回 面白い理論・研究とは何か:研究課題の設定と理論構築の意義
第2回 データ収集前の文献調査と先行理論の役割 (理論的感受性、ケーススタディプロトコル、文献レビューの進め方)
第3回 ケース選択の方法 (統計的サンプリングと理論的サンプリング)
第4回 データ収集と分析の基本 (継続的比較法、追試のロジック)
第5回 定性データの分析手法 (コーディングの実践)
第6回 実地調査を終了するタイミング (理論的飽和の概念とケース数の考え方)
第7回 研究の評価基準 (理論構築型ケーススタディの評価、妥当性・信頼性の再検討)
第8回 研究パラダイムと研究志向 (実証主義、ポスト実証主義、批判的実在論、構成主義)
第9回 Eisenhardtのケーススタディ・アプローチ
第10回 ケーススタディ研究戦略の比較と選択
第11回 ケース研究論文の執筆プロセス
第12回 優良ケース研究論文の分析(講義とディスカッション)
第13回 優良ケース研究論文の分析(学生発表)
第14回 優良ケース研究論文の分析(学生発表)
第15回 優良ケース研究論文の分析(学生発表)
第16回 優良ケース研究論文の総括と研究デザインへの応用
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以下の論文を授業が始まる前に読んでおくこと。 横澤公道, 辺成祐, and 向井悠一朗 (2013), "ケース・スタディ方法論:どのアプローチを選ぶか:経営学輪講Glaser and Strauss (1967), Yin (1984), Eisenhardt (1989a) の比較分析", 赤門マネジメント・レビュー, Vol. 12 No. 1, pp. 41-68.
以下の論文は予習、復習に使ってください。 横澤公道 (2019), "経営レクチャーシリーズ第一回 研究戦略としてのケース・スタディ:ケース・スタディとは何か", 横浜経営研究, Vol. 40 No. 1, pp. 83-97. 横澤公道 (2019), "経営レクチャーシリーズ第二回 研究戦略としてのケース・スタディ:実地調査前に理論は必要か", 横浜経営研究, Vol. 40 No. 2, pp. 94-109. 横澤公道 (2020), "経営レクチャーシリーズ第三回 研究戦略としてのケース・スタディ:ケース・スタディプロトコルとはどのようなものか", 横浜経営研究, Vol. 40 No. 3/4, pp. 357-377. 横澤公道 (2020), "経営レクチャーシリーズ第四回 研究戦略としてのケース・スタディ : ケースをどのように選ぶか Yin(1984)の場合 ", 横浜経営研究, Vol. 41 No. 1, pp. 81-93. 横澤公道. (2021), "経営レクチャーシリーズ第五回 研究戦略としてのケース・スタディ:ケースをどのように選ぶか Glaser and Strauss(1967)の場合", 横浜経営研究, Vol. 41 No. 2-4, pp. 143-151. 横澤公道. (2021), "経営レクチャーシリーズ第六回 研究戦略としてのケース・スタディ──どのデータをいつ収集するか──", 横浜経営研究, Vol. 42 No. 2, pp. 73-81.
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本講義を履修した学生は、以下の内容を理解することを目標とする。
A) 演繹研究と帰納研究の違いを理解し、それぞれの研究戦略の特徴を説明できる。
B) 探索研究、記述研究、説明研究の違いを理解し、それぞれの研究目的を説明できる。
C) ケーススタディ研究戦略の主要な三つのアプローチ(グラウンデッド・セオリー・アプローチ、Yinによる演繹的ケーススタディ、Eisenhardtによる帰納的ケーススタディ)の特徴と違いを理解し、比較できる。
D) 統計的サンプリングと理論的サンプリングの違いを理解し、それぞれの研究における役割を説明できる。
E) 定性データの収集方法およびコーディングの基本的な考え方を理解している。
F) ケーススタディ研究において、どの程度のケース数が必要となるのかについて、理論的飽和などの概念を踏まえて説明できる。
G) ケーススタディ研究の質をどのような基準で評価するのか(妥当性、信頼性など)を理解している。
H) 研究志向および研究パラダイム(実証主義、ポスト実証主義、批判的実在論、構成主義)の違いを理解している。
I) 学術論文の基本構造を理解し、帰納研究と演繹研究では論文構造が異なることを説明できる。
J) 中範囲理論(middle-range theory)および「面白い理論」とは何かを理解している。
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上記の履修目的(A~J)に示した各項目について、最低限の知識と理解を身につけていることを本講義の到達目標とする。
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1)授業への参加およびディスカッションへの貢献(30%) 授業内での議論への参加やコメントなど、講義内容の理解と議論への貢献度を評価する。
2)グループワーク発表(30%) ケース研究論文の分析およびプレゼンテーションの内容を評価する。
3)最終課題(40%) 講義内容を踏まえたレポート課題により評価する。
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【成績評価の基準表】
| 秀(S) | 優(A) | 良(B) | 可(C) | 不可(F) |
| 履修目標を越えたレベルを達成している | 履修目標を達成している | 履修目標と到達目標の間にあるレベルを達成している | 到達目標を達成している | 到達目標を達成できていない |
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履修目標:授業で扱う内容(授業のねらい)を示す目標
到達目標:授業において最低限学生が身につける内容を示す目標
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【授業別ルーブリック】
| 評価項目 | 評価基準 |
| 期待している以上である | 十分に満足できる(履修目標) | やや努力を要する | 努力を要する(到達目標) | 相当の努力を要する |
| 理解度 | 授業内容を超えた自主的な学修が認められ、理論や方法論を発展的に理解している。 | 授業内容をほぼ完全に理解している。 | 到達目標は理解しているが、授業内容の理解に一部不足がある。 | 到達目標に示された内容を最低限理解している。 | 到達目標に達していない。 |
| 研究設計・分析能力 | 研究方法論を応用し、他者に助言できるレベルで理解している。 | 独自の力で研究課題の分析や課題を遂行することができる。 | 文献や資料を参照すれば、独自に課題を遂行することができる。 | 他者の助言があれば課題を遂行することができる。 | 他者の助言があっても自発的に課題を遂行することができない。 |
| 調査能力(予習) | 指示された範囲を超えて自主的に文献を調査し理解している。 | 指示された予習範囲を十分に理解し、他者に説明できる。 | 指示された予習範囲の理解に一部あいまいな点がある。 | 指示された範囲は予習しているが理解が不十分である。 | 指示された範囲の予習が不十分である。 |
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主にパワーポイント資料に沿って講義を進めますが、その中で多くのディスカッションを行い、学生からの質問に答えながら進める双方向型の授業とします。また、実際の定性データを用いたコーディング演習や、そこから命題を構築するワークなど、研究実践に役立つ能力を身につけるための実践的な内容も多く取り入れます。
さらに必要に応じて、研究の進め方(研究テーマの見つけ方、文献調査の進め方、リサーチクエスチョンの設定方法、仮説の構築など)についてもディスカッションを行います。学生が研究方法論を十分に理解し、自らの研究に応用できるようになることを目指し、理解の状況に応じてゆっくりと授業を進めていきます。
授業の後半では、実際に経営学の国際ジャーナルに掲載された優良なケーススタディ論文を複数読み、その構造や方法論を分析します。学生は個人またはグループで論文を担当し、分析結果を発表し、クラス全体で議論を行います。
論文を分析する際には、以下の点について検討します。
・論文を読んだことがない人でも理解できるように要約する。その際、研究の 1) 動機、2) 目的、3) リサーチクエスチョン を明確に示す。
・論文はどのような既存の定説や常識を覆したのか、またはどのような理論的ギャップを埋めたのか。
・論文の構造は一般的な学術論文と比較してどこが同じで、どこが異なるのか。
・各節にはどのような情報が記載されているのか。
・方法(Method / Methodology)の節にはどのような情報が含まれているのか。 (ケーススタディ戦略を選択した理由、研究アプローチ、手順、ケースデザイン〔単一/複数、埋め込み型/全体型〕、ケース選択、データ源、データ分析方法など)
・定性データはどのように提示されているのか。 (図表の使い方、生データの処理方法、データ源の示し方、データの説得力など)
・著者の研究パラダイムは何か。その根拠は何か。
・論文を読んだ感想と、自身の研究への示唆。
最終課題として、各自が自分の研究テーマに関連する国際ジャーナル掲載論文を選び、同様の観点から分析を行い、レポートとして提出してもらいます。
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同講義を筑波大学大学院社会人コースで非常勤講師として過去6年、早稲田大学ビジネススクールで特別講義として過去2年同様の講義を行っています。また今年度からは明治大学大学院でも講義を開始します。本学では、日本語で提供されているのは本講義のみになります。 ケース・スタディを使って論文の執筆を考えている方は必須の講義です。教科書に乗っ取った授業と異なり、独自でありながらわかりやすい授業の構成になっております。
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