|
|
|
|
|
|
経済のグローバル化、ビジネスの多様化の中で、一社で市場全てを押さえる独占的なビジネスは不可能となり、多くの社がそれぞれの得意分野を生かして利益を分配する、エコシステムによる利益配分システムが定着しつつある。このような中で、標準化は、自らの強みを生かし、市場を獲得する上で、ビジネス上の重要なツールとして使われている。 本講義では標準化を活用することで自らの知的財産の価値を高め、ビジネスを成功させた様々な事例を見ていく。これにより、自分の技術をビジネスとして成功させるために標準化をツールとして活用できる力を身につけ、自らの持つ強みを生かし、弱みをカバーする能力を獲得することで、エンジニアとしての基本的素養を高める。
|
|
|
指定した教科書に記載の順で、以下の項目を講義する
第1章 標準化はビジネスをどう変えるのか 第2章 標準化の様々な顔 第3章 サプライチェーンにおける標準化の意味 第4章 モジュラー化を加速しビジネスを変える 第5章 規格に特許を包含させる戦略 第6章 試験方法規格の戦略的活用 第7章 認証のビジネス活用によるアドバンテージ 第8章 製品開発・市場化における知財マネジメント戦略:ツールとしての標準化 第9章 事例で学ぶ逆転のための標準化戦略 第10章 新しい時代に向けた標準化の変化
第7回目の講義は、学生からの中間発表の時間とする 最終回(12回目)は学生の最終発表の講義とする
学生の受講者数によって発表の日を調整することがある。
講義のポイントはおおむね以下の通り。回数は講義深度によってずれる可能性がある。
まず、標準化の概念・定義、目的、役割、分類、基本的な便益等について解説する。特に、身近なものについて標準が活用されていることを理解し、標準の持つ様々な側面を理解し、標準がビジネスに与える影響を考える上での基礎知識を習得する。そのうえで、「標準」のうち最もわかりやすい製品規格を題材に、標準化や規制がビジネスにどのような影響を与えるのかを、様々な事例を見ながら検討する。標準化が基本的には「コストダウン」、「市場拡大」、「差別化」のツールであることを理解する。
試験方法標準については、標準化の重要なグループのひとつだが、これまでビジネスとの関係を戦略的に考えられていなかった。試験方法標準とは何か、どのようなビジネス効果があるのかを整理する。基本的に性能などの試験方法を標準化することは、製品の差別化を進める上で有力なツールとなり得る。しかし一方で、むしろ差別化の解消を促進するリスクも存在している。これらについて、実際の試験方法の標準化のビジネスへの活用事例を検証する。また、コンシューマ製品の様々な場面で見られるクラス分け標準のビジネスについて、その利用には綿密な戦略が必要であることを学ぶ。
さらに、標準化の効果は、サプライチェーンの上で考える必要がある。製品標準をビジネスで活用する上では、インタフェース標準の活用と、その戦略を構築することが必須となる。川下向けと川上向けで異なるインタフェース標準戦略とはどのようなものかを学ぶ。ここからエコシステム概念に広げた標準化の役割を知る。標準化の手法として、標準化を行う場所やその効果は様々で、これを使い分けることがビジネス上のノウハウとなっている。現代のビジネスで必須の仲間作り・エコシステム作りにおける標準化の活用方法を考える。
本講義のもっとも重要な部分として、標準化による差別化を学ぶ。標準化することで差別化するとはどういうことか。ここまで学んだ標準化手法を組み合わせ、製品の差別化に資する標準化戦略を考える。その基本はオープンとクローズの使い分けであり、競争のコントロールであることを学ぶ。さらにビジネスで標準化を活用する場合、他の知財ツールと組みあわせ、イノベーション過程全体を見渡した長期的戦略を立案・実施していくことの重要性を学ぶ。イノベーションの各段階で技術をどのような形で管理すべきかを考える。 関連する分野として標準化のビジネスを大きく捻じ曲げた標準必須特許問題について、この標準必須特許に関係するいろいろな事例を見ながら、最新の標準必須特許問題の動向を知り、標準と特許の使い分け戦略を考える。
標準化利用する際の重要な課題として認証などの適合性評価を学ぶ。製品などが関連する標準に適合しているかを第3者が証明することを認証という。日本では公的機関が第3者として「お墨付き」を与えることが定着しているが、欧米では民間機関による認証制度が発達している。認証の仕組み、効果、日本での課題などについて学ぶ。標準と認証を組み合わせることによって、ブランド化を進める取り組みが日本でも進んできた。実際にブランドづくりに取り組んでいる事例を見つつ、ビジネス環境に応じた適切な制度設計方法について学ぶ
標準化と規制は非常に近い関係にあり、同様のビジネス効果を示すことが多いが、規制であるからこそのビジネス影響も生まれる。標準の一形態としての規制について、そのビジネス活用の重要性を学ぶ。
|
|
|
講義前に配布する講義資料を見て、その中に知らない単語や情報があった場合、ネットなどで調べておく。資料中に質問形式で書かれている部分について、自らの思うところを考えておく。その回答は正解である必要はないが、論理的に導き出せる解答であることが望ましい。 講義終了後は、再度各事例についてネット等で追加情報を探してみることが望ましい。
|
|
|
ビジネス戦略の立案において、エコシステム全体を俯瞰したうえでの戦略立案が必須となっている。このエコシステムにおける間接ネットワーク外部性が正しく働くためには様々なルール作りがキーストーンにより行われていることが必要であり、その多くが標準化活動の成果と言える。標準化はビジネス戦略の中で欠かすことのできないツールであり、このツールを自在に使いこなせる能力を獲得する。
|
|
|
標準化がビジネスに与える影響や効果が、どのような仕組みで発生しているかを理解し、他の分野でそれを再現できる標準化活動を立案する。
|
|
|
出席(30)、講義中の議論への貢献度(30)、課題発表の結果(40)を総合的に評価する。
|
|
|
【成績評価の基準表】
秀(S) | 優(A) | 良(B) | 可(C) | 不可(F) |
履修目標を越えたレベルを達成している | 履修目標を達成している | 履修目標と到達目標の間にあるレベルを達成している | 到達目標を達成している | 到達目標を達成できていない |
|
履修目標:授業で扱う内容(授業のねらい)を示す目標
到達目標:授業において最低限学生が身につける内容を示す目標
|
|
【授業別ルーブリック】
評価項目 | 評価基準 |
期待している以上である | 十分に満足できる(履修目標) | やや努力を要する | 努力を要する(到達目標) | 相当の努力を要する |
理解度 | 授業内容を越えた自主的な学修が認められる。 | 授業内容をほぼ100%理解している。 | 到達目標は理解しているが、授業内容に不足がある。 | 到達目標に達していることが認められる。 | 到達目標に達していない。 |
戦略策定 | 効果的でオリジナルな戦略が策定できる | 標準化を正しい使い方で活用した戦略が立案できる | 標準化を活用した戦略が立案できる | ビジネス戦略で標準化の必要なものが選択できる | 標準化をビジネスのツールとして使えない |
|
|
|
原則としてパワーポイントのスライドで講義を行う。講義中に学生に対して発言を求める。最終レポートは、各人が技術やサービスを自由に選択し、標準化戦略(技術戦略)を立案する。
|
|
|
|
教科書はさらに深い内容を学ぶ場合の参考資料であり、購入しなくて問題ありません。講義はパワーポイントの資料を配布して行います。
|
|
|
|
|
9784542307049
|
|
標準化教本:世界をつなげる標準化の知識
|
|
江藤学編集委員長,江藤, 学(1960-),松本, 恒雄(1952-),瀬田, 勝男,武田, 貞生,藤澤, 浩道,平松, 幸男(1953-),小野, 晃,日本規格協会,
|
|
日本規格協会
|
|
2016
|
|
|
|
|
9784561245285
|
|
標準化ビジネス
|
|
藤野仁三, 江藤学 編著,藤野, 仁三, 1949-,江藤, 学, 1960-,
|
|
白桃書房
|
|
2009
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
参考書は勉強用の参考資料です。講義中では言及しません。
|
|
|
知財戦略に関する講義があれば履修することが望ましい。
|
|
|
ビジネス戦略,標準化,ルール形成,イノベーション,エコシステム
|
|
|
エコシステム時代のビジネスでは、標準化の活用が必須になりつつある。標準化をツールとして活用できる能力を獲得することが、ビジネス戦略を構築するうえでの大きな価値になると期待しています。
|
|
|
|
|
|
|
ルール作りとイノベーションの関係を専門としています。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|